はじめに
インサイトに関するコラム、これまでに以下2つを書いてきました:
- 誰かの「フツー」は、他の人にとっての「インサイト」(かも) https://x.gd/FtPY3
- 『インサイト』は最強のCEP獲得法でもある https://x.gd/h6zw4

ただ、このどちらも「ゼロからのインサイトの発想法」に関するものではなかったので(最初のものは「ごく一部の人がやっていることからの発見法」)、今回は「インサイトはどうやって発想していくのか」に関し、まずそのベースとなる考え方(の一例)をご紹介しようと思います。
なおその前にまず前提として、上記2つのコラムでも記しましたが、ここでの『インサイト』とは、単なる消費者への深い洞察とか裏話とかのレベルや、認知を上げるための広告アイデアではなく、
「(その商品・サービスを) 買う・使う理由やきっかけになりそうだけど、まだ本人が気づいていないこと」
を意味します。
インサイトの発想:よく言われている手法
さて、インサイトの発想に関し、一般的に言われているのは
「消費者自身が認知していない、潜在ニーズを深掘りする」
ということなのですが、この際によく行われていることは、
「消費者自身は気づいていないけど実は困っている、『隠れたイシュー(問題・課題・Pain point)』を探求・深掘りする」
というものです。
もちろん、これはこれでとても大切なアプローチなのですが、この場合、以下2つの状況に直面しがちです:
- 競合他社もこの視点から「隠れたイシュー」を探しているので、似たような内容に行きつく可能性も高い(狭い範囲をみんなでより深く掘っている、というイメージ)
- 「隠れたイシュー」なので現状は(気が付いていないが)マイナスの状態にあり、それをプラスマイナスゼロ、もしくはプラスに持っていくというものなので、その前・後のギャップ(≒驚き・感動)はあまり大きくならない場合がある
例えば、洗濯用洗剤や歯磨き、家電、医薬品など、機能的な便益を主たる独自性・差別化の要素とすることの多いカテゴリーではよくこのような「隠れたイシュー」を「実はこんなこと、ってありませんか?」というようなシチュエーションで気づかせ、それを当該商品が解決する、というパターンが多く見られます。
最近の洗濯用洗剤での、「洗濯槽も洗う」や「こびりついたニオイもはがし取る」、「(液体洗剤の)液だれの心配がない」、「洗う前よりタオルがふっくら」などはこれにあたります。
※当然ながら、この観点から「隠れたイシュー」を見つけても、それを解決する技術・ノウハウを開発できるということは簡単に実現できるものではないので、その能力を研究開発チームが持っているというというのはその企業が誇るべき、素晴らしいことだと認識しています
もうひとつのインサイト発想の手法
さて。
上記の「『隠れたイシュー』の深掘り」以外の手法、ですが、
「『イシュー』ではなく、『(こうなったら)面白い・興味深いのでは?』から探していく」
という「『面白い』の探索」です。
消費者側からすると、「『隠れたイシュー』の深掘り」のインサイトに対する反応は
「ふんふん、なるほど、確かに言われてみるとそうだし、便利そうだから買ってみるか」
というロジカルなものなのに対し、「『面白い』の探索」のインサイトに対する反応は
「これイイ!! 欲しい!」
という感覚的なものとなるのでは、と思っています(ちょっと自分で考えた方にバイアスがかかっているかも…ご容赦を)
起業スタイルにおける「Discovery:発見型」(The “Finding” Approach)と「Creation:創造型」(The “Building” Approach)の違いにも似ていますね。
※(参考)「これから身につけるべき「事業創造」の力」(早稲田大学ビジネススクール入山章栄教授、朝日新聞) http://www.asahi.com/ad/globalj/wbs/
先ほどの「『隠れたイシュー』の深掘り」型の例が洗濯用洗剤だとすれば、この「『面白い』の探索」型の例は、有名なものではiPodやiPhoneが初めて出た時、とか、あと個人的にここ最近で正にこのアプローチだよなあ、と感じたものでいうと以下などでしょうか(「『隠れたイシュー』の深掘り」との混合型、というのも含まれていますが):
- 「3色のカレー」(ハウス食品):「茶色じゃないカレー」が100万個突破 ハウスが“色”にこだわった理由(IT media、2025.11) https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2511/15/news003.html
- 「人生を共に生きるウィスキー」(キリン):キリンが“20年後にウイスキー届く企画” 11万円でも2500本が即完(日経クロストレンド、2025.7) https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/02646/
- 「inquto」(口内美顔器、ライオン):肌をこすることなく、口の中からリフトケアする新習慣『inquto(インキュット)口内美顔器VRインナーリフト』誕生(リリース、2025.9) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000206.000039983.html
- 「bathtope」(バストープ、LIXIL):折り畳んで収納できる「布製浴槽」とは?海外からの問い合わせも殺到…どうやって使う?LIXILに開発背景を聞いた(Huffpost、2025.5) https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_681de0eae4b0a178bc006c22

「『面白い』の探索」型のメリット・アドバンテージ
この「『面白い』の探索」型においては、上記の「『隠れたイシュー』の深掘り」型が直面する2つの状況とは異なることが起こります:
- 競合他社が同じスタイルでインサイトを見つけたとしても、似たような内容に行きつく可能性は低い(広い範囲をみんなそれぞれバラバラに自分の視点で見ている、というイメージ)
- 「『面白い』の探索」なので現状はゼロ(空白)の状態にあり、それが突然プラスとして現れるというものなので、その前・後のギャップ(≒驚き・感動)はとても大きくなるという可能性を持つ

『両利きのインサイト』
なお、この「『面白い』の探索」型は「『隠れたイシュー』の深掘り」型に置き換わるものではなく、両方の視点を持つことで、よりインサイトの幅・種類・ダイナミズムが広がる可能性を持つ、ということとなります。
よって、現在の「『隠れたイシュー』の深掘り(深化)」と「『面白い』の探索」という両方の視点と、ときにはその組み合わせによってインサイトを見つけて・創造していく、というスタイルとなるので、ビジネスイノベーションにおける『両利きの経営』*にちなんで、
『両利きのインサイト』
というように呼んでみることにしました。

* 両利きの経営(チャールズ・A・オライリー著/マイケル・L・タッシュマン著、東洋経済) https://str.toyokeizai.net/books/9784492534083/
『両利きのインサイト』による探索・探求・発見法
さて、ではこの『両利きのインサイト』はどのように探索・探求・発見をしていけばいいのか。
一つ、特に「『隠れたイシュー』の深掘り」に関しては、文頭にも記した以前のコラム『誰かの「フツー」は、他の人にとっての「インサイト」(かも)』(https://x.gd/FtPY3)で紹介した、
「ごく一部の人がその商品に対して当然、と思っている・やっていることが、実はより多くの人達にはとても新鮮に感じられ、その商品を使って・買ってみたいと思うきっかけとなることがある」
というものです。
これは、「現在のヘビーユーザーの方々に対して個別にインタビューなどをすることで発見する(こともある)」(=N1)というスタイルでのアプローチです。
では、上記以外、特に「『面白い』の探索」の発想のためにはどのようなアプローチがあるのか?
これは、また次回でご紹介することとします。
