AIで定量調査を深掘ってみた(冷凍食品Deep Dive編その1)

はじめに

最近はセルフオンライン消費者調査のツールを提供する調査会社(&新興の非調査会社)も、それで消費者調査を実施する企業も増えてきました。

その際、それぞれの質問に対する回答結果を性年代別に違いを見る、ということは多くの方がやっていらっしゃると思いますし、調査会社に依頼した場合もその分析が主としたものが多く、それはそれで大切なのですが、このコラムをご覧になっている方にはお分かりの通り、
「『性年代で分析する』だけではもったいないし、片手落ちとなるリスクも高い」
のです。

以前のコラム『ブランド・商品コンセプト開発方法(1):どのように社員の心の中にある「タネ」を引き出し、絞り込むか – 目線合わせ編』https://x.gd/nvsQCでご紹介した、元P&Gの西口氏が提唱する『9セグメントマップ分析』も性年代ではなく認知・購入頻度と次回購入意向で顧客構造を知るものですが、ブランド・商品に対する購入・使用に関しては(例えば「ベビーフード」や「白髪染め」など特定の年代の方のための商品でない限り)様々な性年代の人が購入・利用していて、最近は特に(ジェンダーレスや博報堂生活総合研究所の『消齢化』https://seikatsusoken.jp/shoreikalab/ など)ユーザー・購買者の性年代のオーバーラップが増えてきているのも事実で、それをわざわざ性年代で括ってしまうのはビジネスの可能性を自ら狭めてしまうことにもなりかねません。

では、性年代以外で調査結果をどのように把握・分析していけばよいのでしょうか。

その一つの方法として、同じ調査のある設問に○○と答えた人が、他の質問に対してどのように回答しているのか、という傾向などを調べる「設問間でのクロス分析」があります。

ただしこれは、「どの設問」の「どの回答をした人たち」が、「それ以外のどの設問のどういう回答と相関があるのか」というような様々な組み合わせの分析を行い、その中で統計上の誤差の観点も踏まえて意味のあるものは何かを発見する(中には発見できないこともある)、というような膨大な作業を必要としていて(レベルはかなり違いますが医薬品メーカーが新薬を発見する作業にも似たものでしょうか)、それはつまりかなりの時間・労力・気力・忍耐力を要するものであり、調査会社に依頼した定量調査であっても結果レポートではそこまで深掘ることはあまりない(もしくはプラスの料金と時間が生じる)、というのが大勢です。
ましてや企業側で行うセルフオンライン調査の分析では、各設問間のクロス分析はその調査会社が備えているオンライン分析ツールで可能であるものの、膨大な数値をチェックし、意味のあるものを発見し導き出す、というのは調査会社に属していない人には物理的にかなり「無理ゲー」なもので、私も「9セグメントマップ分析の各セグメントとそれ以外の設問との比較」程度の分析にとどまっていました。


生成AIで何がどこまでできるのか試してみた

そこに現れたのが生成AIです。

設問ごとのクロス分析をしてくれるのはもちろん、そこから意味のある数値や分析を、統計上の誤差も加味しながら発見し、回答してくれるのです。

ところで、調査会社のアスマークが公開している自主アンケート調査は(公式サイト上で発表しているもの以外に)、必要項目を入力してリクエストすると追加資料をダウンロードでき、その中には各質問に回答者ぞれぞれがどう答えたか、がわかる元々のローデータも含まれています。
今回、今年4月に公開された下記の冷凍食品に関する調査の資料に、そのローデータが入っていたので、これを活用して上記の設問間のクロス分析を、アンソロピック社のClaude(有償版)でやってみました。
※この調査を基にした分析結果とそれをコラムに掲載することに関してはアスマーク社から了承を受けています(アスマーク様、ご快諾感謝です!)

  • 【3カ月以内に冷凍食品を購入した800人に調査】シーン別に食べられている冷凍食品は何か?冷凍食品の利用シーン第1位は「夕食の主食(72.4%)」(アスマーク、2026.4) https://www.asmarq.co.jp/data/frozen_food/
    • 調査期間:2026年2月25日(水)~2月26日(木)
    • 対象者:直近3カ月以内に冷凍食品を購入した全国の男女20~59歳、計800人(この対象者を選ぶため以下のスクリーニング調査を1386人に対して実施)
    • スクリーニング調査項目:
      • SC1. 世帯構成
      • SC2. 直近3カ月以内に購入したことがある食品(複数回答):「冷凍食品」「レトルト食品」「コンビニ弁当」「スナック菓子」「インスタント食品」「鍋料理」「あてはまるものはない」
      • SC3. 「食」に対する考え方として最も強く感じているもの(単一回答):「調理や食事はできるだけ短時間で済ませたい」「健康を意識した食事がしたい」「食費はできるだけ節約したい」「安全に配慮した食事がしたい」「味のおいしさを追求したい」「あてはまるものはない」

アスマーク社の資料の中には各設問を性年代別と上記SC2・3の世帯構成別、食の価値観別で分析したPDF42ページのレポートもあります(=属性別のクロス分析をあらためて行う必要はない)。
下記、その設問項目です:


Claudeによる、これらの設問同士のクロス分析から見つけ出した注目ポイントから、「こんなこともできるんだ!」「こんな分析の深掘りも!」など興味深かったものを以下いくつかご紹介します。なお:

  • これらの作業をする前に、性年代別などアスマーク社のレポートに載っている内容の分析もリクエストし、出てきた数値に違いがない(=Claudeが正しい方法で分析している)ことを確認しています
  • 下記のClaudeからのデータや回答は、何度か私とやり取りをした上でのものを含みます(一発で出てきたものだけではない)
  • かなりの長文になってしまったので、2回に分けて続けて掲載します


1)「3か月以内に購入した冷凍食品」の重複率から見えるもの

該当する設問:「Q2-1.あなたが、直近3カ月以内に購入したことのある冷凍食品をすべてお知らせください。」(複数回答)

  • アスマーク社のレポートにある性年代別のレポート:
  • 私からClaudeに聞いたポイント:『上記を見ると、全体でどの冷凍食品がよく買われているか、性年代別ではどうなのか、はわかるものの、「冷凍食品の餃子を買っている人は他にどの冷凍食品をどのくらい買っているのか」が分からないので、Q2-1の回答の重複率作成とそれをエクセルで出力し、何か特徴的な傾向があれば知りたい』
  • Claudeからの分析データ:重複率のエクセルと、リフト値*(一緒に買われやすい・買われにくい度合い)
    *「リフト値」はこちらから具体的には依頼していない、Claudeの自主的な回答です
  • 特徴的な傾向(Claudeによる記述、太字部分鈴木による):
    • リフト上位に並ぶのは、和菓子・洋菓子・冷凍フルーツ・焼きおにぎり・グラタン/ドリアなど、いずれも購入率が低め(14〜30%台)の「デザート・軽食系」の商品です。これらの購入者は選択している品目数自体が多い「ヘビー購入者」である傾向が強く出ています(例:洋菓子購入者の平均選択数は11.9品目、非購入者は4.8品目。全体平均は5.8品目)
    • 一方、餃子・唐揚げ・炒飯/ピラフ・パスタなど購入率が既に40〜60%台と高い「定番」商品同士は、そもそも幅広い層に買われているため、併買の”上乗せ効果(リフト)”としては相対的に小さくなります。
    • つまり今回見えた併買傾向は「餃子を買うから唐揚げを買う」といった商品同士の直接的な相性というより、「冷凍食品をよく使う人ほど、色々な商品カテゴリーを幅広く買っている」というヘビーユーザー効果が主に効いている、という解釈が妥当そうです。


2)「3か月以内に購入した冷凍食品(複数回答)」と「最も多く購入した冷凍食品(単一回答)」の関係

該当する設問:「Q2-1. あなたが、直近3カ月以内に購入したことのある冷凍食品をすべてお知らせください。」(複数回答)、「Q2-2. その中で最も多く購入したものをお知らせください。(単一回答)」

  • 私からClaudeに聞いたポイント:『Q2-1での割合が多い餃子やピラフ・パスタなどは「最も多く購入」でも同様の傾向が見られるのか、それともある商品は「全体的には購入の割合は低いのに最も多く購入では高い」ということがあり得るのか、を確認したい』
  • Claudeからの分析データ:「Q2-1(購入経験、複数選択)とQ2-2(最も多く購入、単一選択)の関係の全17項目比較」
  • 特徴的な傾向(Claudeによる記述、太字部分鈴木による):
    • 全17項目でQ2-1購入率とQ2-2最多率の相関係数はr=0.85(その他除く)と非常に強く、基本的には「よく買われている商品ほど、最も多く買う商品にも選ばれやすい」という素直な関係が成り立っています。順位の入れ替わりも大半は±1〜2程度です。
    • ご質問の「購入割合が低いのに最も多く購入では高い」という逆転パターンについては、16の具体的な商品名の中には見られませんでした。強いて言えば「その他」が唯一の例外で、購入率は最下位(4.2%)ながらコンバージョン率は55.9%と圧倒的に最高です。ただし「その他」は特定商品名ではなく、リストにない商品(好きなブランドの特定商品など)の受け皿なので、「購入率は低いが選んだらこれが一番好き」という一点物への強い偏りが表れた結果だと考えられます。
    • 一方で、ご質問と逆方向のパターン、すなわち「Q2-1の購入率は高いのに、最も多く購入では割合が低い」商品は複数見つかりました。特に目立つのは以下の3つです。
      • シューマイ:購入率35.5%(8位)だがコンバージョン率4.9%(下位2番目)。買っている人は多いが、ほとんど「メインではない」商品。
      • グラタン/ドリア:購入率30.1%(11位)だがコンバージョン率3.3%(最下位)。
      • たこ焼き/お好み焼き、ハンバーグも同様にコンバージョン率が低め(7%前後)。
    • 対照的に、餃子・パスタ・炒飯/ピラフは購入率もコンバージョン率も両方トップクラス(コンバージョン30〜34%)で、まさに「冷凍食品の主役」と言えるポジションです。
    • まとめると、冷凍食品には「主食・主菜として選ばれる中核商品(餃子・パスタ・炒飯/ピラフ・唐揚げなど)」と「複数商品と一緒に買われるが単独の主役にはなりにくい脇役商品(シューマイ・グラタン/ドリア・たこ焼き等・ハンバーグなど)」という構造がありそうです。


3)「改善してほしい点」を挙げる人とその購買傾向の関連性

該当する設問:「Q6-1. 冷凍食品の改善してほしいと思う点について、あてはまるものをすべてお知らせください」(複数回答)、「Q2-1. あなたが、直近3カ月以内に購入したことのある冷凍食品をすべてお知らせください」(複数回答)

  • 私からClaudeに聞いたポイント:『個人的には、「Q6.冷凍食品の改善してほしいと思う点」というような不満点に関する質問は、一般論としてあまり深い意味につながるようなものは出にくいと認識しているが、その認識を変える可能性のある設問の組合せは』
  • Claudeからの回答:『「Q6×Q2-2(最も多く購入する商品)」や「Q6内の項目同士の重複率」という切り口に変えると、一般論的な不満点調査から一段深い、商品開発に近いインサイトが出る可能性があります。その他の選択肢:「Q7×Q2-1(常備 vs 購入の乖離)」、「Q6内の重複率分析(不満点のクラスター構造)」、「F4(婚姻)・F5(職業)×購買行動」』
  • 私からの追加コメント:『Q2-1とのクロスだと購買点数が多い人と少ない人、という視点からの分析もできるのでは』
  • Claudeからの回答&分析データ:『検証してみると、Q6×Q2-1の品目別クロスで見えた「差」は、大部分が購買点数(選択数)の多さで説明できてしまいました』
  • 特徴的な傾向(Claudeによる記述、太字部分鈴木による):
    • 選択数とQ6の不満点数(「特にない」を除く9項目中の選択数)の相関係数はr=0.35と明確な正の相関。多く買っている人ほど不満点も多く挙げ、「特にない」は3.8%にとどまります。
    • 一方、「価格を抑えてほしい」だけはこのパターンに乗りません(42.1%→55.7%→61.1%→58.2%→56.4%、4-6品目でピークしてやや減少)。価格への不満は購買点数に関係なく広く共有される、ほぼ普遍的な不満だということが分かります。
    • 購買点数が同レベルの人同士で比較しても、洋菓子類・冷凍フルーツ・シューマイの購入者は「カロリーを抑えてほしい」「薄味にしてほしい」が明確に高く、これは基本的なヘビーユーザー効果とは別の、商品固有の不満だと言えます。逆に餃子・パスタ・炒飯/ピラフ・唐揚げ・うどん類にはこの傾向はほぼ見られませんでした。また「濃い味にしてほしい」は焼きおにぎり・お菓子類・ハンバーグに集中しており、これも商品固有の傾向です。
    • まとめると、Q6は「属性別」に見ると一般論的な結果にとどまりやすいですが、「Q2-1品目別×選択数で統制」まで踏み込むと、商品ジャンルごとの具体的な改善要望(お菓子・フルーツ・加工肉系=カロリー/薄味への要望、おにぎり・お菓子系=濃い味への要望)が見えてきました。切り方次第で商品開発に使えそうな具体的な発見はある、という結論になりそうです。


※このあとの「コレスポンデンス分析」と「まとめ」は『AIで定量調査を深掘ってみた(冷凍食品Deep Dive編その2)』 https://x.gd/Uk6Eg に続きます

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