『顧客起点のSWOT(&クロスSWOT)』作成のススメ

昨年のコラム、『ブランド・商品コンセプト開発方法(1):どのように社員の心の中にある「タネ」を引き出し、絞り込むか – 目線合わせ編』https://x.gd/nvsQC)で、「事業・ブランド・商品コンセプトの開発」における3つのステップの1番目、「専門家ではなくても理解できる現状の環境分析情報の共有」=「目線合わせ」の手法の一つとして『SWOT・クロスSWOT』に触れました。

この『SWOT』、企画・営業などの部署に限らず、中期の事業計画策定などの際に部署などで作成された方もが多いのではないかと思います。

一方で、

  • 「SWOTを作ったは作ったけど、その後どうするの?となってそのままにしている」
  • 「具体的な戦略・戦術策定には使えなかった」
  • 「SWOTのために色々な情報を時間と労力をかけて集め、まとめるだけで燃え尽きた」

というような話もよく伺いますし、具体的なSWOTを拝見すると、(大変失礼ながら)「ああ、確かに…」と感じることもあります。


このようなケースにおいて、実はその多くで以下の5つが主な要因となっていると認識しています:

  1. 「第三者(特に消費者やエンドユーザー)からの客観的な視点」がなく、自社視点のみで構成されている
  2. 「どのカテゴリー・競合企業を想定した『SWOT』なのか」が曖昧
  3. 『S:強み』に「自社・当該商品のみ・ならでは」という要素(POD、Point of Difference)だけでなく、「他社・他商品と同等のレベル」という要素(POP、Point of Parity)も入れている
  4. 『O:機会』に「自社ではコントロールできない外部環境のうちのフォローの風」ではなく「自社が将来こういうことをすればビジネス拡大の可能性がある」という将来の自社の選択肢も加えている
  5. 「現在地の確認」である『SWOT』の作成のみで、その組み合わせからどんな戦略・戦術の可能性があるのか、という『クロスSWOT』を作成していない


上記に関し、以下説明していきます。


1)自社視点のみで構成され、「消費者・エンドユーザー等からの客観的な視点」がない

これは特に『S:強み』と『W:弱み』の部分に見られるものです。
例えば「○○業界における長年の実績」や「高い品質と技術」というようなことを『S:強み』の要素として記していることがよくあるのですが、
「それって、消費者(B2Bの場合はエンドユーザー)や競合他社からもそう認識されていることなのですか?」
と確認すると、たいていの場合、具体的な数値などの事実に基づいたものではなく、自分たちの経験値などに基づいたもの、つまり、「自称」だったりします。

『SWOT』は、客観的な視点からの強み・弱み・機会・脅威を記して初めてその次のプロセスに活かすことができるものなので、主観的ではなく、あくまでも客観的に判断・分析する姿勢が重要です。
またこの『顧客起点のSWOT』を作成することにより、このあとに記す4つのポイントもより活きてくることになります。


2)「どのカテゴリー・競合企業を想定したSWOTなのか」が曖昧

これもある意味、1)の「消費者・エンドユーザー視点の抜け漏れ」の一つと言えます。
例えばマクドナルドはハンバーガーなので、業界的に見れば競合は「バーガーキング」や「モスバーガー」など他のハンバーガーチェーンで、その視点からだと『S:強み』は「店舗の多さ」や「提供するハンバーガーの種類の多さ」、「単価の安さ」などとなりがちですが、実際に消費者がランチなどの時に頭の中に思い浮かべるのはほとんどの場合ハンバーガー屋だけでなく、KFCや牛丼、ラーメン、サンドイッチなどの他の外食のイートインとテイクアウト、そしてコンビニのスナックやお弁当だったりするので、その視点からするとマクドナルドのSWOTを作る際には本来その様々な外食・中食も想定しておく必要があります。
ところが、企業側にいると自分たちの属する「業界・カテゴリー」だけを競合と規定してしまい、「消費者・エンドユーザーから見ると他の業界・カテゴリーのものを選択することも全然アリ」という視点を見落としてしまうことが往々にしてあるのです。


3)『S:強み』に「他社・他商品も同等のレベル」な要素が入っている

メーカーの場合は「高い技術と品質」という要素を、また業種を問わず「社員の質」という要素を『S:強み』に加えていることをよく拝見します。
ただこれらは、消費者・エンドユーザーからから見ると「あって当然」のものであり、外部による審査等の物理的な評価などで競合他社よりも明らかに大きく秀でている、というような具体的な事実がなければ、「自社ならでは」という明確な違いのある『S:強み』(= POD, Point of Difference)ではなく、「他社と同等レベル」のもの(= POP, Point of Parity)、となります。


4)『O:機会』に「自社の将来のビジネス拡大の可能性」も入れてしまう

『O:機会』と『T:脅威』は、「自社の過去・現在・将来の活動とは関係のない、外部環境のうちで自社にとってフォローとなる要素(= 『O:機会』)か、アゲインストとなる要素(=『T:脅威』)を指します。
この『O:機会』に「自社が将来○○をすればビジネスが伸びる可能性がある」というような内容の要素を加えているSWOTもよく見るのですが、そういうルールにしてしまうと、この後に述べる「クロスSWOT」作成の際で行うことをここに加えてしまい、見る人によって混乱する可能性もあるため、このような要素は『S:強み』の中に「○○年後に想定される強み」と位置付けて記していくことをおススメします。
同様に、『T:脅威』にも「他社が将来△△をすると自社に大きなダメージとなるリスクがある」というような内容の要素を加えるのではなく、それは『W:弱み』の中に「○○年後に想定される弱み」として記していくことも大切です。


5)その組み合わせからどんな戦略・戦術の可能性があるのか、という「クロスSWOT」を作成していない

『SWOT』はあくまでも「現在の状態における自社・商品の現在地の整理・確認」なので、その状態をベースに今後どのような戦略を立てていくのか、というものではありません。
一方で、『SWOT』の先にある『クロスSWOT』は、「その「現在地」の状況を組合せると、どのような方向性があり得るのか」ということを考える、まさに戦略策定の第一歩にもなるフレームワークですので、『SWOT』を作るのであればぜひ『クロスSWOT』までセットで作成することをぜひおススメします。

この『クロスSWOT』を行うことで、上記4の「自社の将来のビジネス拡大の可能性」を、それが自社の『強み』の要素にあるものを外部環境の『機会』に乗って活かす形のものなのか、それとも『弱み』だと思っていたものを外部環境の『脅威』の逆張りと位置付けて挑戦するのか、それ以外にも『強み』x『脅威』や『弱み』x『機会』という組み合わせなどで色々なバリエーションのある方向性を考えていくこともできます。
しかもその『SWOT』自体が経営層やチームにも同意されているものであれば、その組み合わせから生まれる『クロスSWOT』による戦略も経営層やチームにとっても分かりやすく納得のいくもの、となります。
※参考:SWOT分析の弱点を補う一歩先の分析「クロスSWOT」とは(グロービス、2026.4、下記の図も) https://globis.jp/article/gvluyolw_c/


このコラムなどでお伝えしている「顧客起点のマーケティング」を目指すのであれば、その戦略策定の基礎である「環境分析」のまとめでもある『SWOT』にも「顧客起点」は必須で、かつ次の戦略策定のプロセスとの橋渡しとしての取り得る組合せ=『クロスSWOT』の作成はとても重要なものとなります。

先日のコラム『「ミシュランガイド東京」発刊時の「インサイト」:当時の広報責任者からの視点』https://x.gd/uML6Oのインサイト策定の手前にあった当時の『SWOT』と『クロスSWOT』、上記の例として次回あたりにご紹介しようと思います。

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