はじめに
今までのいくつかのコラムで、高額な外部のコンサル・消費者調査に頼ることなく可能な「新事業・ブランド・商品・サービスの戦略・戦術開発」の手法や、その際にキーとなる「インサイト」の開発方法などに関し、私の過去の経験や事例なども踏まえてお話してきました。
その際、
- N1(個々の消費者・エンドユーザー)に対する深い理解:数字などの定量的なものだけではなく、書き込みやコメント・インタビューなど定性的な情報の読み込み・分析・解釈
- 自社視点ではなく、消費者・エンドユーザー起点で見る自社事業・ブランド・商品・サービスの強み・弱み・機会・脅威等の把握
- 9セグメントマップ分析などによる、自社と競合他社の既存商品・サービスの「顧客構造」の把握と注力していくWHO(ターゲット)の検討・分析
等の、「自社とそれを取り巻く環境(構造と課題と機会)を客観的・多角的に捉える」ための、ある意味で地道な作業の積み重ねの「環境分析」があって初めて、的確な戦略(= WHO/WHAT ≒ コンセプト・インサイト)開発が可能となる、ということやその手法について1年ほど前に以下のコラムを記しました:
- 『ブランド・商品コンセプト開発方法(1):どのように社員の心の中にある「タネ」を引き出し、絞り込むか – 目線合わせ編』 https://x.gd/nvsQC
気付き:理研ビタミンの体制変革の「前提」
過日、テレビ東京系の「カンブリア宮殿」を見ていたのですが、その回では食品メーカーの理研ビタミンがいままでにない着眼点・発想に基づく「ザクザクわかめ」や「インドカレー屋さんの謎ドレッシング」等の新商品でヒットを連発している、ということを取り上げ、その背景には現会長が2021年に商品企画部を「企画部」と「技術部」に分け、『「企画部」が市場や消費者のニーズやインサイトを徹底的に探り、それを「技術部」が形にする体制に変えた』ということがあったと説明されていました。
- 『ニッポンの食卓に革命! おいしさを科学で解析…技術者集団・理研ビタミン』(テレビ東京) https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/cambria/vod/post_341241

「ああ、やっぱり技術先行だけでなく、消費者を深く理解することは大切なんだなあ」などと思いながら、ふと気が付いたのは
『研究開発部署の基礎研究の奥深さと幅広さがあるからこそ、この体制でのヒット商品開発が初めて可能となっている』ということでした。
番組でも、理研ビタミンの売上の約8割は、(各ヒット商品のようなB2C事業ではなく)食品の食感を変えたりする「改良剤」などのBtoB事業で、そのための基礎研究も日々行っている(=だからB2C部門での様々な企画・依頼にも対応が出来る)、ということも紹介されていました。
- 改良剤事業(理研ビタミン株式会社) https://www.rikenvitamin.jp/corporate/enterprise/improvement/
その研究開発部署がフラスコで実験したりしている基礎研究の様子を見ていて、
「基礎研究というものは、それが必ず当たるという保証がなくても、ひとつひとつ丁寧に、目指す目的を見据えた上で行われている:安易なショートカットはない」
という当たり前のことをあらためて再確認し、
「これって、顧客起点マーケティングの「環境分析」における『N1のコメントなどの定性的なものもひとつひとつ面倒くさがらずに読み込み、自ら深く理解して、目指す目的を見据えた上でその可能性を様々な形で探っていく』というような作業(こちらも安易なショートカットはない)ととても似ているのでは」
と思ったのです。
「R&D(研究開発)」≒ 顧客起点マーケティング
そう考えると、この「環境分析 ≒ 基礎研究」だけでなく、それに続く「戦略開発」は「商品開発」の技術的な部分、「戦術開発・実施」は「量産化・市場投入」ということにそれぞれ呼応しているのにも気付きました。
図で表すと以下のようになります(正確に言うと「=」ではなく「≒」で、市場投入はR&Dというより製造に属しますが…):

ここでまたあらためて感じたたのは、
『「顧客起点マーケティング」は単なる発想法・作業ではなく、「R&D(研究開発)」と同様の使命・役割を負っており、(上記の理研ビタミンのように)この二つが両輪となることが、企業のさらなる事業発展のひとつのカギを握る』
ということと、
『この両輪のうち、R&Dは理系的な技術の基礎知識・経験を必要とするが、「顧客起点マーケティング」は文系的なバックグラウンドを持つ人でも取り組むことが可能な「研究開発」』
ということです。
なぜ『この二つが両輪となることが、企業のさらなる事業発展のひとつのカギを握る』のか、に関してですが、両輪が効率的・効果的に回ることで、例えば商品開発・導入する際に必要となる、
- 研究開発部署:開発費用・時間・人材
- 製造部署:量産化・品質管理・原料・時間・人材
- 商品企画部・営業企画部:販売に向けた施策開発と実施のための費用・時間・人材(販促・広告・PR等のプロモーション含む)
- 営業部署:商品導入に向けた先方企業の購買部署・バイヤー等との交渉・フォローアップのための費用・時間・人材
というような膨大な人的・金額的・ノウハウ的な「投資」に対し、
「顧客(エンドユーザー・消費者)起点ではない商品」 と
「顧客を起点とし、その商品に対する評価も確認してる商品」
という2つのケースの「打率」の違いが、結果としてその企業の人的・金銭的資産の有効活用や持続的な利益貢献につながっていくため、です。
この認識を企業の経営陣に理解・納得してもらうことができれば、企業規模にかかわらず、「顧客起点マーケティング」にも今までよりもさらに時間的・人的・予算的な配慮も可能となるのでは?などという安易な「妄想」も広がったのですが…
ご興味があればぜひ、みなさんの会社でもお試しください!
