今まで説明してきたブランド・商品コンセプトの開発ですが、商品コンセプト開発において、通常は商品企画担当のチームで行うことが多いかと思います。
ただ特にここ数年、個人的な経験から、担当部署以外の社員(可能な限り、営業や宣伝といった関連部署だけでなく、バックオフィスや製造も含め普段そういうことに全く関わらない、様々な部署の老若男女の方々)を巻き込むことがとても効果的であると感じています。それは、
「エキスパートではなくても、商品コンセプト開発はできる…というよりも、その方が新しい視点・アイディアが出やすく、かつその商品に対する全体的な理解・熱も高まり、一体感が増すという効果も出る」
ということからです。

この理由と、それをより効果的に実施していくために大切なことに関して、「ブランド・商品コンセプト開発方法」の番外編としてお話させて頂きます。
[理由1] 個々人の情報入手の種類・範囲の多様化
- ネット、SNS等により、個人の好き(「推し」)の世界が、国境や性年代を超えて多様化できるようになっていて、あなたの隣の人は、実はあなたの知らない「界隈」や「そこにいる人の特徴」を色々知っています。
- 日本のマンガ・アニメや音楽がいま世界中で(アジア・欧米だけでなく南米や中東、アフリカなどでも)人気となっていますが、その背景にあるのはYouTubeやTikTokなどの動画サイトやInstagram、XなどのSNSです。
日本でも、フツーの人が欧米以外の国の流行っていることや話題を知っていることが多々あります。 - しかもその情報源は周りの友達からだけでなく、たまたまTikTokで流れてきて知った、など個人レベルのものも多くなっています。
- 日本のマンガ・アニメや音楽がいま世界中で(アジア・欧米だけでなく南米や中東、アフリカなどでも)人気となっていますが、その背景にあるのはYouTubeやTikTokなどの動画サイトやInstagram、XなどのSNSです。

[理由2] 『消齢化』:性・年代で括れる時代の終焉
- 博報堂生活総合研究所が2023年に発表した「消齢化社会」で示したように、すでに人の行動や好みの多くは性・年代では括れなくなってきています。
- 『【新刊発売のご案内】消齢化社会-年齢による違いが消えていく!生き方、社会、ビジネスの未来予測-』(博報堂、2023.8) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000745.000008062.html
- 個人的にも、消費者調査等を通じて、性年代や家族構成・年収等でのセグメント(=平均値、最大公約数)でブランド・商品への共感を得ることはかなり難しく、逆にそのセグメントに固定してしまうことで、本来他にもあるはずのポテンシャルを自ら狭めてしまうことになると認識しています。
- そういう状況においては、N1=個々の人に対する深掘り・理解こそが新たなブレークスルーへのヒントにつながる(=最小公倍数、インサイト)とも考えています。
- N1から得たものがスケールできるのか否かの確認方法に関しては以前のコラム、『ブランド・商品コンセプト案が持つポテンシャル(スケール)はどうやって判断できる?』(https://x.gd/sZgCb)をご参照ください

[理由3] 消費者の声・行動背景を知る手段の「民主化」
- デスクトップリサーチ・SNSやAI、セルフオンライン調査など、少ない時間・費用・知識で多くを得られる時代が到来しています。
- [参考] 『ブランド・商品コンセプト開発方法(1):どのように社員の心の中にある「タネ」を引き出し、絞り込むか – 目線合わせ編』(https://x.gd/nvsQC)の外部環境の確認手法、前回(https://x.gd/71P4y)のコンセプトの検証方法など

[大切なポイント]
この巻き込みをしていく際に、注意が必要なこともあります。それは、
「共通の言語・プロセス(ツール導入含む)」と「適切なファシリテーション・環境の醸成」です。
- 自己流同士での議論は嚙み合わず、誰かが強引に進めれば他メンバーの「自分ごと化」「熱量」は薄れてしまう

- 普段大人しそうに見える人に秘められた「潜在力」を引き出す「心理的安全性」を備えたツールの活用方法と、そのインプット・アイディアを拡張・結合・トランスフォーム・昇華することができるファシリテーターにより、プロジェクトチームの共感力・熱量は高まる
- 例:『ブランド・商品コンセプト開発方法(2):どのように社員の心の中にある「タネ」を引き出し、絞り込むか – 開発編その1』(https://x.gd/nvsQC)で紹介した、エクセル版「WHO/INSIGHT/WHAT/RTB」フォーマットの共有ファイルによる展開等

また、社員だけでなく外部エキスパートや消費者など社外の人を参加させる場合、商品やカテゴリー・食品に関する基本的な知識がないために的外れなものが多かったり、「目立つ」「全く異なる」「尖る」「バズる」ことを主目的にして案出しをする人が出てきてしまうことにも注意が必要です。
- 特にファン等の消費者に参加してもらう場合に、「0→1」的な全くゼロからの発想をお願いしてしまうと、当然のことながら前後も実現性も把握していないために現実的でない案を出すことも多くなります。
その時、それが「実施できない」と対応すると、「じゃあなんで私たちの意見をわざわざ聞いたの?」等ネガティブな反応となり、炎上にもつながり兼ねません。

- そのため、消費者の参加に関してはこの「0→1」のステージに加えるよりも「出てきたアイディアやコンセプトへの反応や改善ポイントを聞く・選択してもらう」ということに参加してもらうのがおススメです。
- もちろん、中には様々な企業的な前提条件を把握して、なおかつ興味深いアイディアを出す方が出てくる可能性もあります。その時はぜひ、その方とはスペシャルアドバイザー的な形でつながり続けていくことをご検討ください。
上記に関しての質問・ご意見や、では具体的にどのようにファシリテーションをしていけばよいのか?などに関してのお問い合わせは、ぜひ suzuki.taku@kirikuchi.co.jp までメールをお送りください!
